「風邪の調子はいいみたいだな。ありがとう。白鳥くんには迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない」

「そんなことないです。お世話は思ったよりもカンタンだったし、何より帰ったらとても喜んでくれるので有難いです。
『ただいま』って言葉も久しぶりに言いました。私はずっと、一人きりだったから……」


話しながら涙が溢れそうになりました。
それを悟られないように必死で目頭を擦った。



「……課長、明日は予定通り戻れそうですか?」


一応確認してみた。
真由香の言ってたように延期になったりするのかと思って。


「戻るよ。帰ったら直ぐに受け取りに行く」


(直ぐでなくても…)


そう思ったけれど、それは口にするべき言葉じゃない。


「わかりました。ピーチちゃんには話しておきまずね……」


語尾が少しだけ濁ってしまった。
鼻が詰まってきて喋り難くなってしまった。


「白鳥くん……」


課長が何か言おうとした。
声も出さずに耳だけ傾けたけれど。



「…いや、いい。じゃあまた明日」


「お、おやすみ…なさい。かちょ……」


急いで終了ボタンを押した。

これ以上続けていたら泣きそうになっているのがバレる。


寂しくないと思おう。
明日が終わればまた、自分の生活に戻るだけだ。


鼻をグズらせながらカゴの中を覗いた。
小鳥は首を傾げ、『キュルル』と可愛い声を聞かせた。