隣に住むのは『ピー…』な上司

「困りごとでもあるの?」


私がぼんやりとしていたからだろうか。
真由香は顔を近づけてきた。


「ううん、何もない。課長も大変だなぁって思っただけ」

「そうだね。帰ったら労ってやらないとね」


朗らかに笑って話す真由香を見つめる。
誰にでも言いたいことを言える彼女が、私は羨ましくて仕方ない。
正反対の性格で、裏表のない真由香に憧れる。


(私はウラばかりだから)


泰明との間に起きたことも、課長の小鳥を預かってることも話せない。

真由香なら笑いとばさずに聞いてくれそうだと思うのに、勇気はまるで出てこない。

心にカギを掛けてばかりいる。

秘密ばかりを積み重ねて、これで友達と言えるんだろうか。



(言えないよね……)


気落ちしたまま一人話に加わらずに仕事をしました。
大口契約の決まったオフィスの華やかさとは対照的に、どんよりとした暗い気分に陥る。


午後の仕事は周りの賑やかさに圧されて落ち着かなかった。
定時で上がろうとする私を、真由香が呼び止めました。


「今夜、お祝いを兼ねて飲もうかって話あるんだけどノラない?隣にいてあげるから不安がらなくても大丈夫よ」


母親みたいなセリフを言ってくれる。
…でも、今日はムリだ。


「ありがとう、ごめんね、待ち合わせがあるの」


人じゃないけど生きものとの待ち合わせ。


「そっかぁ、じゃあまた誘うね」

「うん、またお願い」