隣に住むのは『ピー…』な上司

ヒドいなぁ…と訴える同僚達から私を離した。
微かに震えていたのをどこか気にしていたようです。


『アイをあまり誘わないでやって。人付き合いがニガテなんだから怖がらせないようにして』


怖がっていると見破られた。

「どうして?」と聞いてこないところも良かった。


『無理に誘われたら言っておいで。私がきちんと断ってあげる』


お母さんみたいな優しさと強さを持っている真由香。

彼女になら何でも話しておきたい。

例えば、あの話でもーーー



『真由香、あのね……』


振り向いた彼女を見た瞬間、声が出てこなかった。
もしも話して嫌われたなら、私は誰からも守ってもらえない。



『アイ?』


朗らかな笑みを浮かべて聞く真由香に、『ううん、何でもない』と答えるだけで精一杯。

心の奥に詰まったゴミみたいな記憶は、やはり口に出すことはできなかった。




……この間、課長に言えたのは奇跡みたいなもんでした。
泰明が訪ねてきたことが、ショックの引き金になっていたせいだ。


怖いけれど話して良かったようにも思います。
課長にならどこか解ってもらえそうな気がしていた。




(自分と似てるから?)


課長に腕を持たれた時、あまり怖くなかった。
そ…と優しく、あまり力を込めないでいてくれた。


泰明の強い力しか知らなかった。
あんな優しい力もあるんだと、あの時初めて教えられた。