課長が心配するのもわかる気がする。

小さくても命には変わらない。

ヒナから育てているんだとしたら、愛情はこの上なく深いだろう。



「あの『クール上司』がね」


そこの所が面白い。
オフィスでは慌てたり泣きついたりしないし、表情も滅多に崩れないのに。


くすくすと笑いながら部屋に帰った。
今日一日、課長はどんな顔して仕事をしているんだろうか。

どんな顔して帰ってくるだろう。
風邪だと教えてあげたらどれだけ安心することかーー。


思いながら小鳥を眺めた。
小さなものが家にいるというのは、ほんの少しだけ心がホッとする。なんと言うか、やっぱり和む。



(飼ってみたいな…)


ふとそんな気がしてくる。


課長はどうしてピーチを飼い始めたんだろう。


一人暮らしで寂しいから?

それとも単に鳥が好きなだけ?



「……あの課長が?」


ついそう思ってしまう。
課長のことを知らなさ過ぎる私には、彼のプライベートの全てが謎です。



(だから、こんなふうに頼られると焦るよね……)


私はマイペースに暮らしていたい人。
付き合いは苦手だから、できるだけそっとしておいて欲しい。


(そういうところは似てそうな気がしてたんだけどな)


オフィスで見る小日向課長は、私が知る限り人と接するのが苦手そう。
外回りの仕事も仕方なくやっているように見えるし、何より愛想が全くと言っていい程ない。