(いつもの課長のスタイルだ…)


ワックスで固めた髪の毛。
ピシッときまったスーツ姿。

ただ、手に持っているのは小鳥の入ったプラケース。



どこか間抜けな感じがしました。
けれど、それは言わずに吞み込もう。



「これ受診用のカード」


ヒナだった頃に一度だけ連れて行ったことがあるんだそうです。


「電車で行くなら酔うかもしれないから気をつけて」


吐いたものは触るなと言われた。
触るなと言われても、だったらどうすればいいのかがわからない。


「とにかく頼んだぞ。病院代は悪いが立替といてくれ。今夜にでも支払うから」

「はい。それは構いません」


「それじゃあ、よろしく!」


カゴを受け取って課長の背中を見送った。

こんなことで仕事を休めるなんて、いいのか悪いのかどっちだろう。



「……とにかく連れて行こう」


ケース内の小鳥は静かで、羽を膨らます様な格好をしている。


「寒い?急いで行くからね」


課長の焦る気持ちが少しだけわかって着替えた。

歩き出しながら見つめると、小鳥は鳴き声も立てずにじっとしている。


少しでも早く可愛い声が聞けるようになればいいな…と願いつつ、急いで足を進めた。