隣に住むのは『ピー…』な上司

幸いなことに雨は30分もしたら降り止んだ。

差してきた日差しに安心したのか、小鳥は落ち着いた声を上げている。


『クルルル……』


板の隙間から覗いて安心しました。

自分がしていることもおかしな気がしてきて、課長が留守で良かった…と考えた。


ここに課長が現れたら私はただの変態みたいに思われるだろう。
小鳥のことが心配過ぎて、防火板の隙間から覗いている…なんて。



「ピーチ」


声をかけてみた。
小鳥はカタカタとカゴの中を動き回るだけで、特に反応は示さない。


「飼い主じゃないんだから当たり前か」


なんとか安心させてあげれたら…と思ったけれど、何もできないみたいです。

ガッカリして部屋へ入ろうとした時、バタン!と大きなドアの音が聞こえ、課長がベランダへ走り出してきました。



「ピーチ!」


『ピピ!ピロロロ!』


甲高い声がして、嬉しさを伝えてるようでした。
課長は謝りながらカゴを竿から外し、小鳥に話しかけた。



「ごめんな、寒かったよな」


隣にいるのは本当に小日向真史さんなのか。
こんな心配そうな声をオフィスでは聞いたこともありませんが。



「よしよし、今、中に入れてやる」


まるで父親みたいな感じ。
育メンならぬ鳥メンみたいです。



(ふふっ)


知れば知るほど日頃の課長とのギャップに驚かされる。

課長とピーチの生活は、色合いのない私の生活に楽しみを分けてくれているみたいでした。