隣に住むのは『ピー…』な上司

その人はストライプのパジャマを着て、手には歯ブラシ、ベランダ用のサンダルは片足だけを履いてるという格好。

よほど慌てたのか、右の頬には歯磨き粉がくっ付いてる。

髪の毛は寝起きらしく寝癖がついたままの状態で、落ち着きなくフェンスの下を覗いたり、上を見上げたりしている。



(……何してるの?)


そもそもピーチって何?
失くしたらいけないもの?


アタフタと慌てている人は、その視線を左右に走らせ……



「………あっ」



思わず固まってしまいました。



「もしかして……小日向……課長?」


目が点になった。

よく似てる気がするけど、もしかしたら別人かもしれない……。




「君は………ひょっとして白鳥……くん?」



寝起きの課長と思わぬところでご対面?



「なんで?どうして課長が隣に?」

「そういう君こそ、いつ越してきたんだ?」


「私は先週末にこの部屋へ越したんです」

「俺は昨日出張から戻ってきたばかりだ」

「あ…そうか。1週間出張でしたね。お帰りなさい」

「あ、ああ、ただいま……」


呑気に挨拶を交わしてる場合じゃなかったみたいです。



「あっ、そうだ!ピーチ!ピーチを探さないと!」


さっきと同じように上を見たり下を覗き込んだり。



「あの〜〜、そのピーチって何ですか?」


質問にピクッと顔を引きつらせた課長。


「ピーチと言うのはだな……」