隣に住むのは『ピー…』な上司

自分の住むマンションが見え始めて、ようやくホッとして歩きだした。


(ここだけはあいつに知られたくない……)


そんな気持ちでいっぱいでしたーー。




そんなことのあった翌日、重い気持ちで仕事を終えて洗濯物を取り込んでいる時に課長から謝られた。

手に持っていたのがキャミソールだったから急いでカゴの中に押し込んだ。


課長の飼っている小鳥の話を持ちだしたのは怖さをはぐらかす為。

可愛かった小鳥のことを思い出すと、一瞬だけ気持ちが和む気がしました。


名付けの理由を電話でごまかすようにして逃げた課長を見て、慌てふためいていた朝と同じだな…と考えた。

あの時も今も、オフィスで見る姿とは違うふうに思える。

上司のプライベートをこんな間近で見るようになるとは知らず、それなりに新鮮な気分でいました。


けれど、それは自分の知られたくない過去を知られる結果にも繋がって……




あいつが私の前に現れたのは、メロンを持って行った翌々日の夕方。

マンションの前に背の高い男性が立っているのを見かけた時、ギクッとして足が止まった。

手に持っていたレジ袋が揺れ、ガサリ…と音が鳴った。

それに気づいた人が振り向き、こっちを見た目に震えが走った。



「藍ちゃん」


明るい顔をして笑う男にゾクッとしました。
逃げようにも足が動かず、近づいて来るのを睨んだ。



「……何しに来たの」