隣に住むのは『ピー…』な上司

……それ以来、泰明を恐れるようになった。

襲われかけた私よりも息子を庇う叔母さんのことも信じられなくなってしまった。


叔父さんと美幸ちゃんだけは、最初から変わらぬ態度で接してくれた。

でも、それすらも疎ましく思うようになっていったーーー


高校は寮のあるところを選びました。
長期休暇も帰らず、ずっと寮にい続けました。

親しい友達はできなかったけれど、怖い思いをせずにいれたのだけが幸せだった。

高校を卒業しても一人暮らしをして、叔父さん家には帰らなかった。

専門学校で情報処理の勉強をして、パソコンの技能を身につけた。


木造おんぼろアパートに住んでいたのはそんな理由。
両親が私に…と残してくれたお金を無駄遣いしたくなかったんです。


私が叔父さんの家を出る頃、泰明は他県の大学へと進学しました。
そのまま他県に就職していないと聞いていたから、少しだけ安心して向かったのにーーー



『この最近、仕事を変えてね』


何も聞いてなかった私は愕然としました。


この町に私の天敵が住んでる……。

そう思うと恐ろしくて、仕事中も手が止まってしまった。



叔父さん家でメロンを手渡し、そそくさと帰ろうとする私を見て、泰明は意地悪そうに笑った。


『藍ちゃん、またね』


何が「またね」だと思いながらダッシュして逃げた。

結婚でもなんでもいいから、早くこの町から出て行け!と心の中で叫んだ。