その頃はこんなふうな関係になるとは思ってなかった。

無理矢理押し付けられた小鳥の世話に戸惑ってばかりいたんだ。


「聞いてやったんだから車を出して欲しいと頼まれた。
あいつは何かと言うと、直ぐに取引に持ち込むところがあって。だから俺は結婚をしたくなかった。
夫婦になっても何かと取引させられそうでウンザリしていたから」


「でも、もなちゃんが……」


「あれは向こうが悪い。避妊期間をズレて教えてできたんだ」


「どうしてそんなことを……」


やっぱり課長のことを愛していたからじゃないの?


「仕事から逃げようとしたんだ。ミスが続いて嫌になってたらしい」



課長にとっては望まない妊娠。
それでも、あの人はもなちゃんを産んだ。


「課長はいいの?」


私はやっぱり怯える。
家族はかけがえの無い存在だと思うから。


「何度も言わせるな。俺が家族になりたいのは藍だけだ」



ぎゅっと肩を引き寄せられた。

髪にキスを落とされ、課長が優しく問いかけました。


「そんなに心配なら直ぐにも子供を作るか?」


俺のことが縛れるぞ…と笑った。



「そんなの横暴すぎです」


私はゆっくりと幸せになっていきたい。


小鳥の名前を呼ぼうとしたら「ピー…」で止める課長とーー。




「真史さん……好き……」


さえずりのような小さな声で名前を呼んだ。

これからも隣に住む上司と、私は深い恋に落ちていくんだ。



Fin