隣に住むのは『ピー…』な上司

課長にも何か買っていこうと思ったけれど、何がいいかわからなくて。


(やっぱり情けない……)


隣に住んでいるのに課長のことを知らなさ過ぎる。
ビールを飲むのは知ってても、何が好きかわからない。


甘いモノはニガテだっていうのは聞いた。
聞いただけで、じゃあ嫌いなモノは何かと問われたら迷う。


それと同じで、課長の素顔に触れていたと思っていたけれど実際は違うんじゃないだろうか。
課長があの人に見せた顔がホントの素顔で、私には仮面を見せていたんじゃないのか。


もなちゃんを抱き上げていた時の顔はどんなだったのか。
三人で歩いていた時の表情はどうだったのか。


私といる時の課長は可愛くて、まるで子供のように甘えてくる。

それから、優しい声で私を呼びます。



「……藍」


そう。こんな感じで。



「えっ!?」


振り向いた目線の先にいる課長。
ノーネクタイで私の方へやって来ました。


「なかなか戻らないから心配になって」

「…すみません。課長にも何か買っていこうとして。……でも、何を買ったら喜ぶのか、ちっともわからなくて……」


朝みたいに泣きそうになって堪えた。
休憩室は人がいないけど、オフィスにはまだ誰か残っているはずです。


「課長は何がいいですか?教えて下さい」


近寄ってきた人に背中を向けた。

コインを入れようとしたら、その手を握られた。