最悪な気分のまま夜が明けた。
課長に気づかれないようにそっ…とサッシを開けました。


「あっつい……」


真夏の日差しはどうしてこんなに暑いんだろう。

氷みたいに凝り固まった気持ちさえも溶け出していきそうなくらいの熱を感じる。



(熱か……)


風邪を引いたことのある小鳥を思い出した。
あの子の元へ行って以来、具合を悪くしたりはしてないだろうか。


(するわけないじゃない。私が心配することじゃないよ……)


知らなくてもいいこと。
課長が前にそう言った。



(自分は知らん顔してないのにね)



当たり前と言えばそう。
だって、家族になろうと思えばなれる関係の人達です。


なんの繋がりもない私とは違う。
私はいつでも課長から切り離されて当たり前の存在。

上司と部下という関係だけで、他には何も持ってない。

課長にとっても小鳥にとっても宿借り。

一時凌ぎの心の住まいにしか過ぎない。


だから、もう悩むのはやめよう。

課長には課長の、私には私の生き方がある。

特別な関係にならなくてもいいんだ。

「真史さん」と呼ぶ人は、他にもいるんだから。




「う〜〜ん!」


思いきり伸びをした。
あの朝のように声を出してみました。


「いい天気ーー!」


晴れやかなのに気持ちが暗い。
もう二度と、晴れ間なんて見えそうにない気がする。





(それでも)