「何から言おうか」
課長が困ったような笑みを浮かべた。
サッシに背中をつけて、わざと顔を見ないようにした。
「何でもいいから話して下さい」
もなちゃんのことでも奥さんのことでも構わない。
課長のことがわかるなら全部を引っ括めて知りたい。
それが地獄であっても天国でも、全部をとにかく受け止める。
「君が聞きたがってたピーチの名付けの話からしよう」
そう言うと電話を切ってしゃがみ込んだ。
声が聞こえるように自分も後ろ向きのままで床に座った。
「ピーチというのは日本語で言うなら『桃』だろ。「もな」の名前から付けられたんだ。「もな」を漢字で書くと『桃』と奈良県の『奈』の字だから」
俺が付けたんじゃない…と怒ったように言っていた。
あの時、課長の頭の中にはきっとあの子のことが浮かんでいたんだ。
「もながピーチを飼い始めたのは3歳の頃だ。小さ過ぎて体にも良くないと言われて、俺が暫く預かることになった」
課長の声は淡々としているように感じました。
自分のことを話すというよりも娘さんのことが先だった。
「ハッキリと言うのは嫌だが、嘘をついても仕方ないので喋る。……もなは俺の子だ。
…と言っても、生まれてからずっと一緒に住んだことはない」
課長の言葉に驚いて振り向きました。
我が子と一緒に住んだことがないって、一体どういうことかと思って。
「もなの母親とは若い頃同棲をしていた。お互い結婚なんて一度も考えたりしない仲だった。
彼女が妊娠していると聞いた時、俺は子供を堕ろせと言った。面倒を見る気なんて最初から無かったからだ……」
課長が困ったような笑みを浮かべた。
サッシに背中をつけて、わざと顔を見ないようにした。
「何でもいいから話して下さい」
もなちゃんのことでも奥さんのことでも構わない。
課長のことがわかるなら全部を引っ括めて知りたい。
それが地獄であっても天国でも、全部をとにかく受け止める。
「君が聞きたがってたピーチの名付けの話からしよう」
そう言うと電話を切ってしゃがみ込んだ。
声が聞こえるように自分も後ろ向きのままで床に座った。
「ピーチというのは日本語で言うなら『桃』だろ。「もな」の名前から付けられたんだ。「もな」を漢字で書くと『桃』と奈良県の『奈』の字だから」
俺が付けたんじゃない…と怒ったように言っていた。
あの時、課長の頭の中にはきっとあの子のことが浮かんでいたんだ。
「もながピーチを飼い始めたのは3歳の頃だ。小さ過ぎて体にも良くないと言われて、俺が暫く預かることになった」
課長の声は淡々としているように感じました。
自分のことを話すというよりも娘さんのことが先だった。
「ハッキリと言うのは嫌だが、嘘をついても仕方ないので喋る。……もなは俺の子だ。
…と言っても、生まれてからずっと一緒に住んだことはない」
課長の言葉に驚いて振り向きました。
我が子と一緒に住んだことがないって、一体どういうことかと思って。
「もなの母親とは若い頃同棲をしていた。お互い結婚なんて一度も考えたりしない仲だった。
彼女が妊娠していると聞いた時、俺は子供を堕ろせと言った。面倒を見る気なんて最初から無かったからだ……」

