白鳥はもう直ぐ30歳になるとか言ってた。

部署に異動してきた時、自分は永遠の25歳だと言い張ってたヤツだ。



(面白いところで見栄張りなんだよ)


大人しい性格のくせに無理して販促課に馴染もうとしていた。

その様子に気づいた木下が「無理に誘うな」と周りに言ったら、ホッとした表情を見せていた。



(最初から知らん顔してれば良かったんだよ)


所詮狭いビル内だけの付き合い。
ここを離れてしまえば、誰にも私生活を脅かされることもない。


同じ販促課の長として、何とか職務を全うしている俺が言うんだから間違いじゃない。


俺はかなりの人嫌いだ。

女は嫌いじゃないけれど、とにかく誰かと一緒にいると息が詰まる。


そんな性格だから人間関係がいろいろと破綻している。

おかげで現在の家族は、セキセイインコの『ピーチ』が一羽のみだ。



そのピーチが部屋を脱走した時は慌てた。

1週間も狭い鳥カゴの中に入れっぱなしにしてたから、少しだけ自由を与えていた時に逃げられた。

寝起きのほんの数分間、顔を洗って歯磨き粉を歯ブラシに付けて部屋に戻ってみると、室内を嬉しそうに飛び回っていたピーチの姿がない。




『ピーチ?』


最初はあまり慌ててなかった。
窓を開けた覚えはなかったし、例え開いていても出る筈がないと、たかを括っていたから。


窓が空いているのに気づいた時はゾッとした。

本当の飼い主の顔が思い浮かんで、「ヤバい」とかなり焦った。