(課長のバカ……)


やっぱりそう思う。

日にちが経っても、課長のことばかり考えている愚かな部下の愚痴です。


「家族のこと聞いてみようかなぁ」


真由香は悪戯っぽく笑った。
気軽になんでも聞ける真由香に、私はやっぱり憧れる。


「聞いたら教えて。奥さんがどんな人か私も知りたい」


見たこともない人を想像して悩むのはイヤ。
何もかも目にして全部を忘れてしまいたい。


「写メ撮っておけば良かったね」


残念がる真由香に笑いかけて仕事を始めた。

カチャカチャと鳴るキーボードの音を耳にしながら、カゴのフェンスをクチバシで噛んでいた、あのブルーの小鳥を思い出していました。



今頃、どうしているんだろう。

課長の元から彼女の元へ暮らし始めて、どんな毎日を送っているんだろうか


課長のように優しく名前を呼んでもらっているだろうか。

口笛とかで会話したりもするんだろうか。



(私が知らなくてもいいことか…)


課長に言われたことを反芻した。
あの小鳥にとって、私は一時的な宿借りにしか過ぎなかった。

家族のように挨拶をさせてもらった。

その幸せを思い出だすだけで満たされる。



(課長は…?)


ボンヤリとしていた土曜の朝のことを思い出しました。

腑抜けた感じでつまらなさそうにしていた。

家庭に戻れば小鳥には会えるはずなのに、あそこは自分の帰るべき家じゃないと言い切った。