隣に住むのは『ピー…』な上司

翌朝、ぼぉーとしたままベランダへ出た。
頭の中で考えるということをしたくなくて、そのままフェンスに凭れ掛かった。


眩しくて暑い日差しは、今日も一段と天気がいいと言っている。
その日差しの中で、暗く大きな息を吐いた。



「はぁ……」


一晩経っても胸の痛いのには変わりませんでした。
課長のことがエンドレスに思い浮かんで、どうしようもなく眠りが浅かった。


子供を抱き上げた時の課長の背中は「パパ」でした。
私が幼い頃にしてもらったことを「もな」という子にしていた。


驚きと同時に安心した。
でも、すぐにイヤな気持ちが湧いてしまった。


課長のことを何も知らずにいたんだと現実を突きつけられた気がしました。
あれが課長の素顔なんだと、そう教えてもらった瞬間だった。



(パパなんだ……)


そう思えば思うほど否定したくなってしまった。

課長に子供がいたなんて、そんな事実を知らなくても良かった。


(子供だけじゃない。奥さんもいる……)


昨夜散々考えて気づいたんだった。

課長は妻子持ちで単身赴任中なんだって。


(部下と浮気をしようと考えるなんて、とんでもない輩よ…)


なのに。

思いが断ち切れずに泣いてしまった。

眠りが浅かった分、なんとか眠気に打ち勝とうとしてこんな場所に立っている。


課長が出てくるのを待っているわけじゃない。

そんなこと絶対にないから。