道路は丁度ラッシュ時間を迎えていて、列に並んだ車を眺めがら遠くに霞む海を見つめました。



(キレイ…)


夕日が落ちようとしている。
濃いオレンジ色に染まる空が上へ行くほど薄くなっている。


(来て良かった……)


朝から少し憂鬱な気分でいたのがウソみたいだった。

課長に誘われなかったら、こんな素敵な場所で食事することもない一生だった。



「お誘いくださってありがとうございました」


食前酒で乾杯する時、そう言ってグラスを傾けました。
課長は一瞬だけ驚いた目をして、それからフッ…と微笑んだ。


「こっちこそ。付き合ってくれてありがとう」


カチン…と鳴らしたグラスの音が胸の中で弾けた。

何かが始まっていくようなそんな音に聞こえたーーー。