(誘う相手が違うのでは……?)


その言葉は言わずにスルーした。
課長の背中を見ながら歩き、胸が鳴りだすのを覚えました。


昨夜、課長が私に言った言葉は本気だろうか。

真剣に私のことを女にしたいと考えている……?


だから、ここに誘った?

本命でなく遊び相手を落とす為にわざわざ……?




乗り込んだエレベーターは一気に上の階に向かって上がりだした。

一緒に乗っているコンパニオンの説明を受けながら、あっという間にレストランの階に着いてしまった。



「ごゆっくりどうぞ」


頭を下げるコンパニオンに会釈をして出てみれば、そこには星屑を散りばめたようなライトがぶら下がるレストランがあってーー。



(なんだか高そう……)


庶民派OLの考えることと言えばその程度。
ムーディーな雰囲気の店構えに圧倒されながら店の中へと入っていった。


もう少しマシな格好で来れば良たかった…と反省する。
ボーイさんに椅子を引かれて座るのなんて初体験でした。

向かい合わせに座る課長とも目を合わせづらくて戸惑う。
でも、課長は少しも動じてなんかない。


「ノンアルコールのビールとカクテルで。それから料理は……」


スマートな対応を見せて、さっさと飲み物と料理を注文してしまう。
その素早さに見惚れる。
こっちはソワソワしてばかりでちっとも落ち着かないのに。


外に視線を走らせた。
夜景に早い街の雰囲気は、ガチャガチャとしていて賑やかそうだ。