雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~

 騒がしい廊下をひとり、おもむろに歩きながら思う。特に何かをされたわけでもないのに、どうしてすぐ、ムカつくとか気に入らないとか言うんだろう。

 夏成実自身、いい人ぶるつもりは全くないが、そういう陰険な奴等は昔から好きではなかった。

 ――日本人って「好き」には消極的なのに、何で「嫌い」って事はオープンにするんだろ!?

 海外好きの夏成実の脳は、いつの間にかワールドワイドな話にまで広がっていた。

 高校二年の夏、海外留学した時の事が不意に思い出されて、何だかとても懐かしくなる。

 夏成実の父親は海外にも支社を持つ大会社の社長で。夏成実は小学校入学までの六年間を海外で過ごした。「帰国子女」なんていうほどのものではないから、その事は小学校時代の友人しか知らない。

 おかげで英語の成績だけは良かったが、他の教科は毎回補習だったりする。

 日本人の親から生まれたというのに、夏成実がどこか他の子と違う感覚を持っているのは、そんな幼少期の影響かもしれなかった。