そう……あの日ーー。

 花火大会の時、千咲希を置いて行ったのは後輩のトラブルなんかじゃなく、あの女の子のところへ行ったのだろう。

 物分かりのいい彼女を演じていたけれど、自分だって匡の事がずっと気になっていた。ズルいのは、春翔だけじゃないーー。


「……千咲希?」


 心配そうな穂香に、千咲希は自分に言い聞かせるように小さく頷いた。


「大丈夫。あのね、穂香に聞いてほしい事があるんだ……」


「うん、何でも聞くよ! 何でも言って!」


 千咲希は笑顔を作って、穂香と並んで歩き出した。