追いかける隙も与えられず、功は呆気に取られてその場に立ち尽くす。

 ――俺、結局アイツに都合良く付き合わされただけじゃん? そう思うと腹立たしくはあるが、なんだか急におかしくなってきた。

 夏成実は、今まで功が付き合ってきたどの子とも似ていない。周りのどの女子とも違っている。

 珍しいから? 新鮮だから? 今までにないタイプだから? それで興味があるって事だろう。功は自分自身、そう結論づけた。

 嵐のように去っていった夏成実との数時間。映画館を出た功はそれを思い出しつつ、あてもなくブラブラと歩き出した。