雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~

 二十一時を回り、バイトを終えた穂香は、休憩室に入るなり、机に突っ伏した。

 ――つ……疲れた……。

 ずっと立ちっぱなしだった足はジンジンと痛むし、空き過ぎたお腹は、音を立てる事すら忘れている。早く着替えて帰ろうと思いながら、なかなか行動を起こせずにいた。


「お疲れ」


 少し遅れて休憩室にやって来た帆鷹の声に、穂香は突っ伏していた顔をおもむろにあげる。自分以上に働いていたはずの帆鷹は、さほど疲れを感じさせず、普段とあまり変わりなく見えた。


「九条、凄いね」


「何が?」


「疲れてないの? 足とか痛くない?」


「忙しいより暇な方が疲れるし。立ち仕事は慣れた」


 言いながら、男子更衣室へ入って行く帆鷹の背中に、穂香は今日一日を振り返る。

 ――九条、かっこよかったな……。

 クラスではさほど存在を感じさせない帆鷹だが、バイト先では圧倒的な存在感があった。 てきぱきと仕事をこなす帆鷹は、本当に頼り甲斐があり、穂香の帆鷹への想いは、よりいっそう強くなっていた。