雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~

 家に着いた律樹は、キャリーケースの中身を片付けると、制服を着替えもせずにリビングに下りた。


「ちょっと、出かけてくる」


 プリンを出そうと冷蔵庫に手をかけた萌果の背中に言い、返事を待たずに玄関に向かう。


「萌果も行く!」


 玄関まで出て来た萌果に、律樹は優しい笑みを浮かべ、首を横に振った。


「夕飯までには帰ってくるから」


 拗ねた顔をしている萌果に、頭ポンポンをして、律樹は家を出た。向かったのは、悠李のバイト先。

 ――悠李に大会の報告をしながら、宇治抹茶かき氷でも食べよう。

 まるで言い聞かせる様に思いながら、核心は別のところにあった。

 ――今日、桜川はバイトしているだろうか……?

 そんな事を思いながら見た腕時計は、十五時半を回っている。律樹は自分が何をしたいのかもわからないまま、その歩調を速めた。