雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~

「江坂くん、まさかの朝帰り登校!? ショックー!!」


「夏成実は江坂のどこがいいの?」


「どこって……顔とか、ソフトなのに素っ気ないとことか。そういう那子だって、実は江坂くんの事気になってんでしょ?」


「まさか。あんなチャラ男タイプじゃない」


「どんな人がタイプなの?」


「絶対硬派。そこは譲れない」


「硬派かぁ。じゃあ、今宮くんみたいな人だ?」


 夏成実が何気なく口にした名前に、那子の心臓は条件反射の様にドクンと大きく脈を打つ。


「江坂か今宮かって言われたら……今宮かな」


 飽く迄何でもない様に言ったものの、那子の鼓動はいつもより早いリズムを刻んでいた。


「今宮くんもいいけど、アタシはやっぱり江坂くんだなー。でもさ、好きな男のタイプが違う方が女の友情は壊れないらしいから、うちらちょうどいいよね」


 軽く受け流してくれた夏成実にほっとしながら、那子も「そうかもね」と、微笑んだ。