雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~

「あの子、やばくない?」


「超気合入ってるじゃん」


「マジ、オーラ半端ないって!」


 それが自分に向けられた言葉だとも知らず、伊万里は後方の壁際に場所を確保した。オールスタンディングの店内は約七百名収容可能で、真ん中あたりまで人で埋まっている。


「俺、最後まで見てらんねーかも。そしたら外出とくわ」


「いや、生で見たら絶対ハマるって!」


「でも、ヴィジュアル系だろ? 客も半分以上女だし」


「いやいや、ヴィジュアル系とかそういうんじゃなくて……」


 後ろの男二人組の会話に、伊万里は内心つぶやく。

 ――何系とか、見た目、そんなもので音楽を判断してほしくない。見て、聴いて、自分がどう感じるか。それだけだ。

 開演十分前のアナウンスが流れ、観客のテンションが上がる。早くも『Fate』コールが始まりそうな勢いで、伊万里もギュッと拳を握り締めた。