「ねぇ、名前、呼んでよ。」
「薫」
「もっと。」
「薫、薫、薫、薫、薫。」
「最後くらい、愛してるって言いなさいよ。嘘でもいいから。」
「愛してるよ、薫。」
彼女が初めて、僕にキスをした。
痛みに限界が近づいていた僕は、記憶が、どんどん薄れていった。
刺さるナイフ、哀しみに埋もれた君。
僕は、後悔した。人一人を愛すことがどれだけ大変なのか。
ここまで僕は、何を君にできたのだろうか。