その日は珍しく父親が出かけていた。

舞は昼寝をせずにテレビを見ていた。

ニュース番組のついたテレビを何の気なしに見ていると、特集コーナーに入った。

「それでは、特集です。今、子供たちの心の病が増えています」

キャスターは感情の読み取れない表情で言った。
心の病、か。

舞はテーブルにひじをつきながらテレビを眺めていた。


「あなたは、お父さんに何をされたの?」

するどくキャスターがモザイクのかかった女の人に質問した。

「父親はいつも私の中に入ってくるんです。なんて言うんですか、性虐待っていうのかな」

舞はテレビのボリュームを大きくした。

「そうですか、それがきっかけで病気に?」

後半部分は聞こえてこなかった。

私と一緒だ。

舞は自分の身に起こっていることをようやく理解した。

私は、今まで父親のおもちゃにされていたんだ。

怒りは心の底からふつふつとわいてきて、煮えたぎるようだった。

このままではいつか私が滅びてしまう。

やられる前に、やらなくては。

舞は、犯行を決意した。

庭で揺れる木の葉が地面に影を落としていた。