鏡の中にすんごいブスがいる。

目が腫れて、鼻は真っ赤。

昨日の晩、あれだけ泣いたんだから仕方ないんだけど。

私は洗面所で顔を洗うと、タオルでごしごし拭いた。

よし、もう大丈夫。

悲しいことはみんな洗い流したから。


今日はちょっとメイクを変えてみよう。

アイラインを濃いめに入れて、強くみせよう。

そんなことでしか、私は私を隠せない。

先生は、家族が大事だ、って言った。

もちろん私も、家族は大事。

お父さんのことは…。

思い出さない、思い出さない。


鞄に時間割どおりに教科書を詰め込むと、不意にカレンダーに目を遣る。
あー、あと2週間で期末テストだ。

今年は頑張らないとやばいよなぁ。

大学受験の勉強もしなくちゃいけないし。

あ、そういえばバイトの連絡そろそろ来る頃だ。
先生のことは忘れない。
忘れられないよ。

でも、一歩踏み出すためには先生のことは胸にしまっておくべきなのかもしれない。

先生、でもね、あなたの居場所はいつだって私の中にあるから。

だから、ずっと心の中で思い続けても、いいよね?


校門をくぐるのが億劫なほど、足取りは重かった。

先生、やっぱり大好きだよ。