車は往来の少ない道を走った。

車の中で流れる音楽は心地よくて、思わず眠ってしまいそうだった。

くーくー、と私は眠ってしまった。


目が覚めると、2階建てのカフェオレ色でタイル張りのアパートが見えた。

「神宮寺、起きろ。ついたぞ」

先生は私に声をかける。
本当はもっと前に目が覚めていたんだ。

でも先生のその言葉が聞きたくて、私は寝たフリをしていた。

起きろ、だって。

そんな言葉でドキドキしている私。

先生は車から降りると、
「大丈夫か、歩ける?」
私はうん、とつぶやくと胸元をタオルケットで隠しながら車を降りた。

先生はかんかんと高い音を立てながら外階段を上がっていく。

私も後に続く。


部屋のドアの前に立つと、先生はキーケースからかぎを取り出して、鍵穴に差し込んだ。

ドアがきしみながら静かに開く。

「ただいま」

先生が声をかけると、パタパタというスリッパの音が聞こえた。

「お帰りなさい」

私は先生に促されて中に入る。

この人が、先生の奥さん…。

丸い目をして、小柄。

ちょっとぽっちゃりしている。

背が高くて痩せているのがコンプレックスの私は、

「可愛い人」