12歳、だった。

今でも思い出すのはあの夏のむせ返るような暑さ。

杏飴を売るおじいさんの鳴らす鐘の音。

公園のプールで泳ぐ子供たちの声。

そして激しく響くセミたちの叫び。

私はいつものように学校から家に帰ると、1階のリビングに寝転んだ。

テレビではアニメの歌が流れている。

お姫様が冒険をするストーリーだ。

私はこのアニメを見てから昼寝をするのが日課だった。

お姫様が敵と戦っている辺りで私のまぶたはゆっくり落ちてきた。

「眠い…」

そうつぶやいて目を閉じる。

耳に響いていたお姫様の声が遠くなる。

私は深いまどろみの中に落ちていった。


私は昼寝をすると決まって下腹部の辺りに痛みを覚える。

痛みはリアルで、時には感じたことのないような快感を伴ってくる。

なんだろう、この感覚は。

私はそう思いながら目を覚ます。


私が目を覚まし、横を見ると、細い目をした男が横たわっていた。

鼻は高く、笑うとえくぼができるのはどことなく私に似ている。

「お父さん…?」

私の横で寝転がる父は薄く微笑みながら私の下腹部を撫で回している。

それは心地よさよりも気持ちの悪さを感じる。