「・・離して下さい」 「おっと、悪い悪い。」 男はそう言いながらも力を緩めるだけで、 一向に手を離そうとしない。 「でも、離したらにげちゃうでしょ、あんた」 「はい」 「随分正直だねえ」 ははっと笑って、男は空いている方の手で胸ポケットから何かを取り出した。