さあさあ着替えて、と言って十史郎が服を着せてこようとするので、 私は寝起きの不機嫌な表情で彼を追い出した。 「それで、どこに行くの」 用意された炊き立てのあきたこまちと豚汁の香りに惹きつけられながら、 特に目を合わせることもなく質問する。 「お嬢様は本当に食べる事がお好きですねえ」 ククッと握った右手を口に当てながら笑うと、 まだほんのり湯気の出ているだし巻き卵ときゅうりの浅漬けをテーブルに並べて、 どうぞ、と彼は言った。