「…………」 「……大丈夫?」 美空は沈黙する男の縄をほどく。 男はコクンとうなづくと、突然ハッとした顔で駆け出した。 「大丈夫か!」 男は車の中の息子の安否を確認する。 息子は何ごともなかったように、すやすやと寝息を立てている。 「 はあ~、良かった。本当に良かった 」 男はヘナヘナと地面に崩れ落ちた。 「 天使さま、ありがとうございます。 わたしは……わたしはなんて愚かな男…… 」 男が泣き出す。 美空はすっかり“天使さま” になっていた。