SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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————あれから五年……



「…………」


暖かな春の日。

少年は寂しそうに、一人、上を見上げていた。

視線の先にはハンカチの木……

もう五年の月日が経つというのに、少年の心はいまだに過去を引きずっている。


「今年もそろそろ花が咲くよ」


凛とした声が辺りに響く。

美しく成長した少年の、銀の瞳は頼りなく、悲しみがそこに満ちている。


「……美空……」


青空に彼女の笑顔を思い出す。

彼女が好きだったまぶしい青空……

遠い過去の思い出が頭に蘇ってくる……


「……っ、」


少年は唇を噛みしめる。

死んでしまった彼女を、 美空を、 少年は忘れる事はないだろう……

——だが……


少年はまだ気付いてはいなかった。

遠い街の片隅で、美空がとっくに息を吹き返していた事を……


「……会いたい……」


心地よい風が吹き抜ける。

運命の糸が、再び二人を結ぼうと密かに動き出していた——。



————fin.