「なんでっ……なんでみくが行かなきゃいけないんだ……!」


「……え、」


「もう十分だろ……みくはよく頑張った……だからこれ以上……」


「……ゆう……」


「またあんなっ……! オレはもうみくが傷付くのを見たくないっ!」


寒々しい廊下に湧人の声がよく響く。

強く向けられた瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。


「…………」


あたしはその目をじっと見る。

二人の間の無言の空気が更に冷えて尖ってくる……


「あたしが行かないとだめなんだ」


沈黙の後、あたしは思いを口にした。


「Blue dollはあたしの一番の敵なんだ。だからあたしが終わらせる」


「……っ、だから何でっ! 行けば只じゃ済まないんだよ! 殺されるかもしれないんだよ! なのにっ……!」


「それがあたしの役目なんだ」


「役目ってそんなっ……おかしいだろっ! 重すぎるよっ! みくだけそんなっ……」


「あたしだからだ」


「……えっ……」


「あたしだからの役目なんだ。あたしは今まで何度も何度も死にかけた。それでも生きていられたのは、いろんな人の助けや思いがあったからだ。

あたしが一人で生きてるんじゃない、あたしはみんなに生かされてる。

だから救われた命で今度はみんなを助けたい。それが役目だというなら、なおさら……」


「……っ、でもっ、」


「それに、さっきの湧人とあたしも同じだ」


「……え?」