一ノ瀬はぐっと押し黙る。

これまでのいきさつは黒木たちから聞いていた。けれど状況を目の当たりにすると二人の態度に言葉を失う。

透も薫も完全に正気を失っている……


「……ハァ、」


一ノ瀬はガラスを隔てた向こう側、昏睡状態でベッドに横になっている天使美空に視線を移した。


まだ予断を許さない状況……


黒木が事件で不在の中、美空はかろうじて命を繋いでいる。

普通の人間ならとっくに死んでいたはずの劇薬を美空は大量に摂取した。


……美空だからもっているのだ。


すぐに死に至らないのは美空の薬の耐性か、またはしるしの働きのせいか、

いずれにしても……


「……すまん……」


一ノ瀬は弱く言葉を吐き出した。
そのままギリッと奥歯を噛み締める……


「美空が殺した訳じゃない」


まっすぐ前を見つめながら、今度は強く二人に言った。