「みくを一人に出来る訳ないし! だから一緒に行こうって、」
「あ〜、あたしはダメっぽい 」
「……え?」
「さっき言いそびれたんだ。足、まだネンザしてる」
「……ネンザ?」
「黒木、やっぱり調子悪かったんだ。そういえば、まだいっぱい治ってないし、だからあたしは歩けない。湧人は家に帰ってあげて。お婆ちゃんがかわいそう」
「……っ……だってっ……みくっ、」
「あたしは大丈夫。ここ、意外と安全だから」
「……え、」
「マンション。黒木がね、いろいろ考えてくれたんだ。ほら、ボタンを押せば誰も家に入れないし、窓も壁も、ぜんぶぜんぶ頑丈なんだ。だから、あたしは大丈夫」
「……みく……」
湧人は視線をウロウロさせる。
「……ハァ、」
溜息の後、さっきの黒木とユリみたいに悩ましげに、それでいて口調を強く湧人は喋った。
「分かった。オレはちょっと家に帰る。でも、またすぐに戻ってくるから」
「……え?」
「婆ちゃんの様子見て、親戚とか、ヘルパーさんに来てもらう。落ち着いたらすぐにここに戻ってくる。だから約束して。それまで誰が来ても絶対中に入れないって」
……あ、
一瞬、目が揺らぎそうになるのを堪えて、
「うん」
あたしは湧人に返事する。
「じゃあ、約束」
そう言うと、湧人はマンションを飛び出して行った。


