SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……っ、」


「許す訳ないでしょ! そんな謝られたぐらいで! アンタに謝られたってこっちはどうなる訳でもないんだから!」


突き飛ばされ、あたしは後ろへ倒れこむ。


——ガッ!


地面についたあたしの手を、透がすかさず踏みつけた。


「……っ、」


容赦ない力加減……

靴と地面とに挟まれて右手が強く押し潰される。


「なあ、あん時どんな気分だったんだ?」


透は冷たく声を放った。


「……え、」


「オレが母さんの話をした時だ。おまえぼーっとして、一体何を考えてた。どんな気分だったんだ!」


「……っ、」


更に強く踏みつけられ、骨が軋んだ音を立てる。

這いつくばる格好で、あたしはじっと透を見上げた。


「いい気味だとか思ってたのか! 人の苦しむ顔を見て、おまえ内心笑ってたのかよ!」


「……そんな、ちがう……」


「何が違う! だから素性隠してたんだろ!」


「……そ、れは……」


「言いなさいよっ!」


乱暴に薫があたしの髪をつかんだ。

無理やり斜め上を向かされる……


「バカな奴らだって、ざまあみろって、アンタそんな風に思ってたんでしょ? だったら、そうはっきり言えって言ってんの!」


昨日までとは違う敵意の目で、薫はあたしを見下ろしている。


「……っ、 ……がう……」


「……は?」


「ちがう、あたしは——」
「——うるさいっ!」


——パアンッ!


また、頬を殴られた。


「アンタなんか! アンタなんか!」


今度はめちゃくちゃに、あたしをグーで叩いてくる。