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"ティン"


季節外れの音色が不規則に耳に届けられる。

夏からずっと吊られたままの風鈴。

閉じた窓のせいで音はこもり、それは小さく弱々しい。

広い縁側には冷たい秋風の侵入はなく、窓からはたっぷりの暖かな日差しが降り注いでいた。


——午後二時……


まだ二時なのか、もう二時なのか、いまいち感覚が分からない。

朝方、湧人とここに帰って来てから、あたしはただ流れに身を任せているしか出来なかった。

言われるがままお風呂に入って、寝て、

そしたら急に起こされて、何故か急いで駆けつけた、黒木とユリに対面して……


「…………」


窓の外を見つめる。

敷地の隅にある小さな野菜畑では、さっきからお婆ちゃんが何やら畑の手入れをしている。

昨日とは打って変わって晴れた空……



『……ゴメン……』
『……ごめんなさい……』



また、二人の声が蘇った。


さっき二人は見た事もないような落ち込んだ様子で、ごめんとあたしに謝った。

すすり泣くようにしながら何度も何度も……


あたしは、よく分からなくて……というより、何の話をしているのか、言葉がうまく入ってこなくて……

ただ、泣いてる二人を見つめてた。


何がそんなに悲しいのか、苦しいのか、それはあたしのせいなのか……


やっぱりあたしのせいなのか……


心にはどんどん重いものが被さって


結局、何も二人に言えないまま……


唯一、意志を示せたのは、


『『……帰ろう……?』』


そう、二人が言った時。


————帰らない。


あたしは首を横に振った。