「……イジメ、だあ……?」
「嘘でしょ……そんな……」


「そう! みんな嘘ですわ!」


「いや……それも、だが……」
「サヤ……あなた、何で……」


「……は、い?」


濁り始めた場の空気……


「——いや! だからっ!」


話を戻すように透が声を張り上げた。


「とてもショックでした。美空がBlue dollだったなんて……」


「ええ。まさか美空さんが、お母さんを殺したあの凶悪な犯罪組織のメンバーだったなんて……」


「待ってくれ透っ! それはっ……!」

「薫ちゃん違うのっ! それにはいろいろ事情があって!」


“ 事情 ” という言葉を透と薫は聞き逃さなかった。


……やっぱり……


仄かな光が胸に射し込む。


「だからその事情を聞きに来たんです!」
「直接、美空さんの口から!」


「「……っ……」」


強い眼差しに黒木とユリが息を止める。

そこへ黒木に着信が入った。


「……あ、コイツ!」


登録したばかりの相手を確認し、黒木はすぐに電話に出る。


「……おう湧人。さっきは……は⁉︎ 美空が見つかった⁉︎ ……おまえの家にしばらくって……あっ、おいっ!」


透と薫は急いでその場を後にする。

希望をより強いものにして、湧人の家を目指して走った……