SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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「ねえ湧人。アルバイトってどうやるの?」


次の日の土曜日、湧人の家に来ていたあたしは勉強する湧人の背中に聞いてみた。


「……アルバイト?」


手を止め湧人が振り返る。


「うん。あたし、働くんだ」


「……働く……?」


「早くお金が必要だから」


すると、湧人は不審な顔をした。


「みく? どうしたの?」


「なにが?」


「どうしてお金が必要なの?」


「……あ〜、 ちょっと……」


口ごもるあたしに、湧人の強い視線が刺さる。

そのまま黙りこんでいると、


「ちょっと待ってて」


席を立ち、湧人が自分の部屋へと歩いていく。

戻ってくるなり、


「これ、良かったら使って」


あたしにお金を差し出した。


「……え、」


「あんまり現金は家に置かないから、今手持ち150万ぐらいしかないけど」


「…………」


「もっと必要? だったらすぐに——」
「——違う湧人!」


あたしはぶんぶん首を振った。


「だめだ! それは! 湧人に迷惑!」


「みく気にしないで……今は質素に装ってるだけでオレの家本当は——」

「だめだ! あたしはちゃんと! ちゃんと自分で働くんだ!」


「……え?」


「人に迷惑かけない頼らない、自分の力だけで、ちゃんと……」


「……みく……?」


「……ごめん、あたし……」


横を向き、湧人と少し距離を取る。


「……ちゃんと、言えば良かったね。 でも、言うのもなんか、心が重くて、口も重くて」


視界の隅、腰を下ろす湧人を見ながら、あたしはゆっくり話し始めた。