SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「…………」


床に落ちたリモコンから、電池が外れて一本転がる。

イライラしながらサヤは続けた……


「親がいないから当たり前、まだ15才だから誰かが面倒見てくれて当然だ……アンタそんな風に思ってるわけ⁉︎

だったらそんなの冗談じゃないわ! 世の中アンタみたいなのはいっぱいいるし、アンタだけが特別じゃない!

生きる為にみんな必死に努力して、苦労して働いて頑張ってお金を稼いでいるの!

いつまでもぬるま湯に浸かってないでアンタもちゃんと働いて自立する事を考えなさいよ!」



「…………」


働く、稼ぐ、自立する?


「お金がないなら自分で稼ぐ……これは常識中の常識よ! 特にアンタは他に身寄りがないんだから自分で稼いでいくしかないの!

誰にも頼らず迷惑かけず、一人で生きていかなきゃいけないの!」


「…………」


「高校生なんだからバイトでも何でも出来るでしょ! これ以上あの二人の負担にならないで! 早くお金ためてとっととココから出て行って!」


——ハアッ!

サヤは荒く息を吐く。


「…………」


……そうか……


知らなかったな、そんな事。


“ 働く、稼ぐ、自立する ”


今日のサヤの常識講座は、いつもより重く胸にのしかかった。