SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


————そしてマンション。


「寄り道なんかしてんじゃないわよ!」


——パアンッ!


今日も挨拶がわりに叩かれる。

初めて手を出された日からずっと、あたしはサヤに叩かれるのが日課となっていた。

サヤいわく、叩くのも教育のうちだという。



「 “ 学校が終わったら道草せず、まっすぐ家に帰りましょう ”

小学校で習わなかった⁉︎ そんなの誰でも知ってる常識だっつーの!」


——ドガ!

今度は蹴りが飛んでくる。


「……ごめん」


よろめきながらあたしはサヤに謝った。


「だいたいアンタ、どういう神経してんのよ!」


「……え?」


「お金がないから人さまにおごってもらうって、その図太い神経は一体どうなってんのかって聞いてんのよ!」


「……図太い?」


「まったく、とんだ厄病神ね。指揮官の息子だけじゃなく、ユリ姉さまや誠兄さま……アンタみんなのスネかじって」


「……スネ?」


「みんなにとってアンタは迷惑な存在だって、なんで自分で気付かないわけ?」


サヤはあたしを睨みつけた。


「……どういうこと?」


「……ハァ。 じゃあ、今日の常識講座は “ お金 ” についてね。そこに正座しなさい!」


サヤはソファに腰を下ろす。


「うん」


腕組みをして座るその前で、あたしは床に正座した。


「そもそもの話、アンタがここに住んでいるのがおかしいのよ!」


「……え?」


「アンタ、能力が不安定だからD.S.Pを追い出されたんでしょ? そんな落ちこぼれが……なんでまだあの二人の世話になってんのよ!」


「……えっと……」


あたしは少し返事に困る。

サヤはあたしの過去やしるしの事は知らない。

あたしがD.S.Pに来たより後にサヤは組織に加わっていた。