「あっぶねっ……」
引き寄せたまま、透は逃げた自転車を睨みつける。
「おまえ大丈夫か?」
すぐにあたしに視線を移した。
「……あ。 ……うん、」
急に透との距離が近い。
すると、何故かドクンと心臓がはねた。
……う、ん……?
「……ああ、わり、」
透がパッとあたしを離す。
「…………」
「つーか、やっぱおまえおかしいぞ」
「……え?」
「何か悩んでんならオレに言えよ」
「べつに、なにも……」
「ウソつけ! さっきまで上の空だったくせに!」
怪訝な顔で透はあたしを見下ろした。
「……あ。えっと、」
「この間も言ったが、オレだって少しは分かるようになったんだ。
そりゃあ、アイツ……湧人みてえにはいかねえが、おまえが何かおかしい事ぐらいは分かる」
「…………」
「なあ、一体どうした?」
まっすぐ見つめるその瞳……
「……うん、実は……」
あたしは透に話し始めた。
「さっき、イヤな夢を見たんだ」
「……夢? なんだ夢の話かよ! つか、授業中寝てんじゃねえ!」
「でも、それがすごく悪い夢だったんだ。みんな傷だらけでかわいそうで……」
「……は?」
「夢だけど夢じゃない、あたしにとっては本当で、だって見てきた事だから」
「…………」
「分からなかった、階段じゃなかった。あたし犠牲の上を歩いてた……」
「…………」
困惑したような表情……
眉根を寄せ、透はぐるりと視線を動かす。


