「…………」
……う〜ん?
あたしはぼーっと一樹を見る。
「……どうか、しましたか?」
「あ〜、うん。やっぱり難しいね。一樹の話」
「……⁉︎」
「なんとなくは、分かったけど」
すると一樹は苦笑した。
「すみません。確か以前にも同じような事を言われましたね」
「うん?」
「そういえば昔は奏太にもよく言われていました……」
「……ふうん」
「今は特に言わなくなった所を見ると……なにか感慨深いものがありますね……」
一樹の口からため息がもれる。
何か思い出しているのか、その目は遠くを見つめている……
「…………」
……奏太か。 ……元気かな……
ふと、眠そうな奏太の顔が思い浮かぶ。
「それで、どうなの?」
あたしは一樹に聞いてみた。
「……どう、とは?」
「奏太。朝、ちゃんと大丈夫?」
「……ああ、その事ですか」
一樹はフッと頬を緩めた。
「大丈夫ですよ。ドイツではわたしも一緒に住んでいますし、朝はちゃんとわたしが起こしています」
「起きるの? 前、全然起きなかった。3時半に起こしたのに……」
「それは少し早過ぎますが……起こすにはちゃんとコツがあるんですよ」
「コツ?」
「おいしい朝ごはんです。匂いにつられて、たまに一人でも起きてきますよ」
「……へえ」
「まったく、そこは変わらないですね。昔は両親が共働きでしたので、よくわたしが料理を……。彼はわたしの作るご飯が大好きで——」
微笑みながら一樹は喋る。
「……そうなんだ」
たまに頷きながら、あたしは耳を傾けた。


