その後は、慌ただしく二人は動き出していた。

さっそく身の回りの整理というか、一樹が奏太の話を聞きながら倒れてたヤクザの記憶操作をしたり、通信で誰かと連絡を取り合ったり……


あたしはあたしで、またしるしが反応した。


だからさっきのニセモノアニキの龍のタトゥーをトカゲに変え、奏太の服をビリビリ破いて背中の龍をキレイに消した。

なんか、奏太、口をパクパクしてたけど……


あとは本部に行くと言うので、あたしは二人とそこで別れた。

……というか、本当はイギリスでの事を報告をしに一緒に連れて行かれそうになったけど、疲れたからと逃げるように立ち去ったのだ。


その後は、もう夜も遅いというのに、久しぶりに湧人の家へとやって来ていた。

シャワーで汚れた体を洗い流し、置いてあった服に着替え……

今は湧人の部屋の中、ベッドにもたれてグッタリしている。


「湧人。ごめんね、夜遅くに」


眠気をこらえてあたしは喋る。


「いいよ、まだ寝る時間じゃなかったし。それより……どうしたの?」


さっき、血だらけで窓から入って来た時とは違い、湧人が冷静に聞いてくる。


「やっとしるしが解決したんだ。あたしずっと寝不足で、やっと寝られる思ったら今度はいっぱい悪霊が、いつの間にかお墓の中で……」


「うん」


「大きなやつ出てきて、それが歯のない変なやつなんだ。小さい箱を開けて開けてって。それに歯が入ってるからって……」


「うん」


……?

ふと気付いて口を止める。


……あれ。

さっきから全然湧人がこっちを見ない。

少しムッとしたようにも見えるその表情……


「……湧人? なんか怒ってる?」

すると、


「……別に」


そっけない返事が返ってくる。


「やっぱり、なんか怒ってる?」


「怒ってないよ。怒ってないけど、でも、」


「でも?」


「また、そのパターンかと思ってさ……」


「パターン?」


訳が分からず、あたしは首を傾けた。


「みくってさ、突然パッタリ来なくなるだろ。あんなに毎日来てたのに……」


「……あ、」


「母さんの事もあるし、オレ、そういうのあんまり好きじゃないってゆうか……連絡だってつかないし、どうしたのかなって心配して……」


「……心配、してたの?」


「……婆ちゃんだって心配してた。もう寝ちゃったけど、さっきまでオレに言ってたんだ。みく、全然来ないから寂しいって」


「……寂しい?」


「……うん」


「来ないと、寂しいの?」


「そりゃあ、突然来なくなったら誰だって……」


「湧人も、寂しい?」


「……っ、オレは別にっ、」


すぐに湧人はハッとする。

ゆっくりこちらに向き直り……


「寂しいよ。オレだって」


ツンとした顔でそう言った。