SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「つまりはあなたと奏太との間に恩義など、始めから存在してはいなかった。

全てはあなたが仕組んだもの……

歪んだ性的嗜好……とでもいいましょうか。恩義とは名ばかりの自分勝手なエゴですね」


「……っ……てめえッ!!」


再び男が殴りかかる。

一樹はその手を拘束すると完全に動きを封じてしまった。

強く締め上げ、グイッと顔を近付ける。


「……んぅ!」


「これだけは申しておきましょう」


「……っ……」


「奏太はわたしの弟です。今後、もし奏太に何かあればわたしは容赦しませんよ」


そう言うと、男の額を手で覆う。


「————!」


淡い緑色の光が一樹の手を包んで……

数秒ほどでパッと離れる。


「……と言っても、目覚めた時にはもう何も覚えてはいないでしょうが……」


意識を失い倒れる男に一樹は言葉を投げ捨てた。

訪れる静寂……


「……アニ、キ……」


奏太がヨロヨロ身を起こす。


「……夢、じゃないよな……? 本当に、アニキ……」


宙に伸びた奏太の手……


「……っ、 奏太!」


一樹はその手でガッチリつかむ。


「……! ……ア、ニ……」


「……遅くなって申し訳ありません。 今までよく、頑張りましたね……」


「……っ、 アニキ……!」


見合ったあと、二人は互いに抱き締める。

言葉にならないたくさんの思いが二人の肩を震わせた……



「……よかった……」


その光景にあたしは胸をなでおろす。

目の前にはすでに気を失い、何も喋らなくなったブルドッグおじさん。


「よかった。本当によかった」


なにか熱いものを感じながら、あたしはじーっと二人を見守る。

……と、


「……?」


ふと外の気配に気が付いた。

移動してそっと扉を開けてみる……


「「「「……っっ……」」」」


……やっぱり。


そこにいたのは玉ちゃんたち。
みんな何故か鬼のお面をつけている。