「ねえ! ブルドッグおじさんってば!」
まだあたしが呼びかける中、
——タッタッタッ……
さっそうと一樹は歩いていく……
向かう先には偽者アニキ。
そして、もはや動く事もままならず、傷だらけで横たわる奏太……
意識朦朧になりながら、それでも奏太は驚いた顔でじっと一樹を見つめている。
「……っ……誰だてめえッ!」
偽者がドスのきいた声をあげる。
一樹はスッと男の前で足をとめた。
「わたしは、」
奏太と少し目を合わせ、
「わたしは奏太の兄です」
一樹はハッキリ口にする。
冷静な口調とは裏腹に、その仕草には明らかな怒りが見て取れた。
「……ああ⁉︎ てめえフザけた事言ってんじゃねえぞッ!」
「至って真面目に答えていますが」
「……っ……コイツの兄貴はこの俺だッ! 部外者がホザいてんじゃねえッ!」
「部外者はあなたの方でしょう」
「……んだとッ!」
「仮にあなたが兄だとして、弟にここまでするでしょうか。さんざん殴りつけた上、刃物で切りつけ骨折まで……。 フザけているのはあなたです。とても正気の沙汰とは思えませんね」
「……てめえッ!」
——グワッ!
偽者が一樹に殴りかかる。
しかし、
——ゴッ! バキッ!
「……ぐはっ……」
すぐに勝負がついてしまう。
一樹は余裕で男を倒した。
「なるほど」
男の額にふれた後、一樹は冷たく視線を投げる。
「全てはあなたの思惑だったのですね。なんと狡猾で巧妙な手口でしょう……まだ幼かった奏太を狙い、わざと喧嘩を吹っ掛け、あたかも自分が助けたように振る舞うとは……」
「……っ……」


