SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「ねえ! ブルドッグおじさんってば!」


まだあたしが呼びかける中、


——タッタッタッ……


さっそうと一樹は歩いていく……


向かう先には偽者アニキ。

そして、もはや動く事もままならず、傷だらけで横たわる奏太……

意識朦朧になりながら、それでも奏太は驚いた顔でじっと一樹を見つめている。


「……っ……誰だてめえッ!」


偽者がドスのきいた声をあげる。

一樹はスッと男の前で足をとめた。


「わたしは、」


奏太と少し目を合わせ、


「わたしは奏太の兄です」


一樹はハッキリ口にする。

冷静な口調とは裏腹に、その仕草には明らかな怒りが見て取れた。


「……ああ⁉︎ てめえフザけた事言ってんじゃねえぞッ!」


「至って真面目に答えていますが」


「……っ……コイツの兄貴はこの俺だッ! 部外者がホザいてんじゃねえッ!」


「部外者はあなたの方でしょう」


「……んだとッ!」


「仮にあなたが兄だとして、弟にここまでするでしょうか。さんざん殴りつけた上、刃物で切りつけ骨折まで……。 フザけているのはあなたです。とても正気の沙汰とは思えませんね」


「……てめえッ!」


——グワッ!


偽者が一樹に殴りかかる。

しかし、


——ゴッ! バキッ!


「……ぐはっ……」


すぐに勝負がついてしまう。

一樹は余裕で男を倒した。


「なるほど」


男の額にふれた後、一樹は冷たく視線を投げる。
 


「全てはあなたの思惑だったのですね。なんと狡猾で巧妙な手口でしょう……まだ幼かった奏太を狙い、わざと喧嘩を吹っ掛け、あたかも自分が助けたように振る舞うとは……」


「……っ……」