SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし



「…………」


しばらく歩いた所で、ふと奏太が立ち止まった。

確かめるように少し後ろを振り返る……


——サッ!


物陰に隠れたあたしの姿は見られてないと思うけど……


「……チッ、」


髪を数回わしゃわしゃして、再び奏太は歩き始めた。


……あれ。

もしかして、気付かれた?

さっきよりも歩くスピードが上がってる。

不機嫌オーラ全開に、どんどん前に歩いていく。


……待って……


あたしは急いで後を追う。

その後は——

あたしが犬や猫に絡まれても……

看板にぶつかって転んでも……

三輪車の子どもに追われても……

上から生たまごが落ちてきても……

奏太はけして後ろを振り向かない。


"ワンワン! ニャ〜ゴ〜!"

"チリンチリン! ガシャン!"


「……っ、」


たまに気にする素振りは見せるけど、

それでもやっぱり無視を決めこんだ。


「……はあ、」


気付けば、奏太との間にだいぶ距離が出来ている。


"ジワ〜ッ"


「分かってる! 分かってるんだけど……」


……あ。

奏太が角を曲がって行く。

完全に姿が見えなくなった。


「「「……クスクス……」」」


すれ違う人々が、あたしのズタボロアフロを見て笑う。


「……もう、疲れた……」


あたしは地面に座り込む。


"ワオン! ……ガブ! ダダダ!"


また犬が現れて、あたしのアフロを奪って逃げた……