SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

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「……ンン、」


……あ、れ……


目を覚ますとそこに一樹はいなかった。

わずかに残るぬくもり……

一樹がまだ部屋を出て間もない事が分かる。


……?

どこからか香るさわやかな匂い。


「……あ、」


さっきまで一樹が着ていた黒のジャケット、

それがあたしの上にのっていた。


……いつき……


あたしはジャケットを握りしめる。

一樹の “ 催眠 ” のおかげでまるで長時間寝ていたように体が軽い。


……よし。


あたしは素早く準備する。

バッグを手に、勢いよくマンションを飛び出した。


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「……ハァ、ハァ、」


やって来たのは扇龍のアジト、その近く。


「……ハァ〜、」


やっぱりココまでの道は遠かった。

しかも、せっかくの変装が……

途中、カラスと野良犬に付きまとわれ、さらさらストレートだった黒髪が、食いちぎられてボッサボサ、黒ぶちメガネも歪んでる。


……まったく、


前から思ってたんだけど、なんかあたし、鳥や動物に好かれるっていうか。

思い返すと、いつもそばで鳥が鳴いてたり、犬や猫が寄ってきた。


まあ、動物は嫌いじゃないけど……


そんな事を思いながら、誰も住んでいない民家の物置を物色する。

竹ぼうきとちり取りを持って扇龍のアジトへと近付いた。



『わたしの合図があるまでは何もせず、様子を見ていて頂けますか』


夢の中、さっき一樹はそう言った。

だからあたしは言われた通り様子をみる。


「……何もしない……」


つぶやきながら、アジト付近のそうじを始めた。